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後期高齢者医療制度がはじまったころの話

社会福祉

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2008年から75歳以上の後期高齢者を対象とする新たな医療保険制度が始まりました。

この制度が始まって14年経つわけですが、その当時1割負担と3割負担しかなかったこの制度もこの10月から2割負担も始まったことを受け、この制度が始まった時のことを振り返ってみたいと思います。

私たちは、企業や産業単位の 「組合健保」 その組合健保をもたない中小企業勤務の者で あれば「協会けんぽ」、公務員あるいは私学校教職員なら 「共済組合」、それ以外の人は市 町村単位の「国民保険 (国保)」、4つの健康保険いずれかに加入しています。
後期高齢者医療制度の対象となる75歳以上の人々は、被扶養者なら扶養者が加入している健康保険、 そうでなければ国保に加入しています。
一方で、あまり知られていませんが、高齢者に対して給付だけを行う「老人保健」というのがありました。
つまり、75歳以上の人々が加入する健康保険はバラバラ、なおかつ給付を受ける老人保健は別に存在したわけです。
ですから、今回の後期高齢者医療制度は、別々だった加入と給付 (負担と受益と言い換えてもいい) を一体化して “新しい健康保険” を作った、ということになります。
加入と給付、負担と受益の一体化は、本来の健康保険のあるべき正しい姿といえるでしょう。
給付費が増えれば、当然保険料は上がります。
その両者の関係が加入者に見えやすくなり、給付抑制のインセンティブが働きやすくなるわけです。
後期高齢者医療制度の狙いも、まさしくそこにありました。
自ら保険料を支払う痛みを感じて、給付抑制の努力をしてほしい、と言うわけです。
ですから当時高齢者からブーイングが起きましたが、 悲鳴を上げる高齢者が増えることは、国の狙い通りの結果であったのです。

しかし、この後期高齢者医療制度、まったく狙い通りになりませんでした。もう一度、後期高齢者医療制度という言葉をよく見てみると、国もメディアもあたかも、 “新しい健康保険制度” のように伝えていました。
私も先ほど、そう書きました。
でも実は、それは間違いなのです。

社会保障の専門家である西沢和彦 日本総合研究所主任研究員は、「これは、『制度』であって『保険』 ではない。 関連法律には、保険であるという表現は一切出てこない」と指摘 しています。

保険であれば、運営責任者である「保険者」がいます。 国民健康保険であれば市町村が保険者です。 保険者はその保険の財政責任を負わなければなりません。
保険者がいなければ、その運営主体は財政責任を負わないということになります。
つまり、給付抑制のインセンティブが働かないのです。

そしてそれが、最大の問題です。

この後期高齢者医療制度の運営主体者は 「広域連合」 と言われる地方自治体です。耳慣れない言葉ですが、 都道府県単位の市町村連合のことです。
例えば、国民健康保険も介護保険も市町村単位の運営です。
それがなぜかこの制度だけがいかにも中途半端な広域連合という得体のしれないものなのです。
なぜそうなったのでしょうか?
それは、市町村が新制度の運営主体になるのを嫌がったからであります。
そして、財政責任など負いたくないから、「保険」 ではなくなったのです。

国は頭を抱え考えました。
何とか地方自治体に運営主体者となってもらわなければなりません。
そこで一計を案じて、保険料を年金からの天引きにしました。
保険料徴収の事務の煩雑さ、コスト負担を運営主体にかけない配慮です。

しかし、これも逆効果だったわけです。

被保険者は天引きに怒ってしまし、さらに保険者側は財政責任を負わず、保険料徴収の苦労もないなら、給付抑制のインセンテイブは二重に働きません。
運営主体は広域連合という “架空の地方自治体” です。
究極の無責任体制といってもいいでしょう。
市町村単位で財政責任を負いながら、地域ぐるみで健康管理維持活動を展開し、予防・治療両方の観点から医療費給付費を抑制していく。
その本来あるべき姿とはまるで逆の制度設計になってしまっているのではないでしょうか。

そもそも、保険とは給付費の高く見込まれる人も低く見込まれる人も加入して成り立つ、つまりリスク分散が前提となる制度です。
それなのに、後期高齢者というリスクの高い人びとだけを取り出して完結したら、それは持続可能性が低いに決まっています。
国が掲げている 「持続可能な社会保障制度」とはかけ離れています。
こうした国と市町村の利害が絡み、その狭間に落ちたような無責任が幾重にも重なった制度に高齢者たちが閉じ込められてしまったわけです。

多くのメディアは、年金暮らしのお年寄りの苦しさばかりを煽りたて、こうした制度上の 欠陥を突きません。
実は、新制度の給付費に対する、当事者たちの保険料負担は1割に過ぎません。
残りの5割は税金からの補填であり、4割は拠出金という名の支援金です。

どこからの拠出金でしょうか。
前述した4つの健康保険からの支援金です。
つまり、勤労者の支払う保険料の一部が後期高齢者医療制度に横流しされているのです。
組合健康保険はこの支援金のおかげで9割近くが赤字に転落しました。
新制度としてくくりだされた以上、後期高齢者のために拠出する理屈はまったくなく、学者によっては拠出拒否の訴訟を起こせば、認められるのではないかと言うほど根拠は薄弱といわれていました。
持続性の高い医療制度を再構築するには、これまで書いてきたような矛盾を解消する制度設計の変更とともに、新たな財源の確保が必要です。
ですがその当時は、社会保障改革は税制改革とセットに行うべきだという正論はいっこうに実現されませんでした。
それどころか、年金からの保険料の天引きによって、高齢者の感情を逆なでしたのだから、消費税の増税などとても世論が許さない状況でした。

というような、 いろいろな問題を抱えた後期高齢者医療制度のはしりの頃の話でした。

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